論文のテーマと先行研究の相互的関係

 序論で置いてけぼりにされた論文を読んだ。具体的に言うと、テーマや「問い」の提示がなされないまま、「先行研究」のパートに移行している論文である。自戒を込めて基本的な論文のルールを確認しておく。

 

・先行研究は自動的に決まるわけではない。

・論文のメインテーマと先行研究は互いが互いを構成し合う関係にある。

・つまり、明確なテーマがなければそもそも何がそれに先行する研究なのか決まらないし、先行研究をレビューすることなしには論文のテーマ(問うべき問い)は決まらないということ。

・自分の研究を既存の研究のなんらかの文脈に位置付けなければならない。

・その位置付けは何らかの点で新規性を含んでいなければならない。

 

 後者の二点に関していうと、「ないない」型の差異は微妙だなあと最近感じている。つまり、「◯◯にかんする研究はまだ数が少ない」とか、「これまで◯◯が**の観点から論じられることはなかった」のように、否定的に先行研究との違いを示すやり方である。もちろんそれが必要な場面や文脈があるのは承知しているけれど、あんまり「ないない」と言われると、「本当にないのか」「ないとして、だから何なのか」と思わされる。もっとも、「だから何」にちゃんと答えられていると、読者としても納得して読み進めることができるのだが。

 「ないない」よりも、積極的な意義を提示するほうが実りが大きいんじゃないだろうか。それに読者にとって、そのほうがストレートで分かりやすいはずだ。

 

 序論についてもう少し詳しく述べると、テーマの遂行プランも提示しなければならない。「何を、どうして、どのように、どこまでやるのか」を書くということだ。研究過程・執筆過程では、このとき、参照するべき先行研究が鮮明に方向付けられるように思う。雑に言うと、研究初期段階の”なんとなく関連しそうな論文を読んでまとめる”というフェーズから、たとえば「同一の研究対象に対して異なる手法で取り組んでいる研究」と「異なる研究対象に対して同一の手法で取り組んでいる研究」を同じテーブルで系統立てて検討する段階に至るということだ(もちろん扱うテーマによって参照するべき研究はさまざまだが)。

 

 こうして考えると、序論だけでも書いておくというのが研究を進める上で効果的なのかもしれない。あとからどんどん改訂していくにせよ。雑記終わり。