スーパーの2つのカゴとその置き場

 近所のスーパーの出入口付近に、今まではなかった「精算済みカゴ入れ」が置かれていた。僕はその理由が直感的に理解できたと同時に、すごく便利なやり方だと感心した。

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 背景はこうである。まず、このスーパーには2種類のカゴがある。入店した客は入り口付近に積まれている赤いカゴを使って買い物をする。これは未精算を表すカゴである。2つ目はレジを通す際に使われるグレーのカゴ。客は赤いカゴを持ってレジに行き、店員はそれをグレーのカゴに移し替えて精算する。第二に、このスーパーは南北に出入口があり、その中央にレジがある。上の写真は北口の写真だ。

 買い物が終わり、商品を袋詰めしたあとが問題である。グレーのカゴ入れは、以前はレジ横にしか置かれていなかった。だから、特に"カゴをカートに置いて買い物していた客"が、カゴをカートに乗せたまま(つまり、グレーのカゴを戻し忘れて)出口に向かってしまい、グレーのカゴを赤いカゴの山に置いていくということが起こってしまう。つまり、出入口付近の赤いカゴの山の中にグレーのカゴがちらほら紛れ込むという(店員にとっては整頓が手間がかかり、客にとってもグレーのカゴが混ざっていたら不便だという)「トラブル」が生じてしまう。じっさい、僕も上に書いた通りのミスをしたことがあるし、他の客がミスしたところを見たこともある。

 グレーのカゴ入れが"出口"に置かれていた理由はもはや明白であろう。レジ横のグレーのカゴ入れに戻し忘れた客が"入口"の赤いカゴの山にグレーのカゴを混ぜてしまわないように、である。2種類のカゴ入れは、「入口」と「出口」という空間的秩序に埋め込まれている。

 というわけで、出入口付近にグレーのカゴ入れが置かれたのは、トラブルなく、店員と客の双方がスムーズに買い物を進めるための、ひとつの合理的なやり方になっているのである。

 また、このやり方が意味のあるものとなっているのは、このスーパーにおいて、レジと出口の距離が離れているということもあると思う。レジと出口が至近距離にあれば、カゴを戻し忘れることはないだろう。カゴを持って外に出るなんてことは普通はないはずだ。しかし、このスーパーはレジから出口まで数十秒歩かないといけない程度には離れている。だから、客が買い物した荷物をカートに置いて(その際にカゴをカートに置いたまま)出口まで行くのは、無理もないことだと理解できる。こうした空間的な配列が人々の振る舞い方を一定の方向に導いている。

 スーパー側がおこなったのは、その空間的な配列を変えることなく、グレーのカゴ入れを出口に設置してトラブルに対処するということだった。これは経済的なやり方であるという意味で合理的であるし、客が難なく適応できるという意味でも実践的に合理的なやり方である。

 めっちゃ便利で嬉しいです(小並感)